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Liner Notes

磯野真穂の作品に関するライナーノーツ。本の背景や執筆過程を振り返ると共に、解説や帯執筆など、制作に関わった書籍をご紹介しています。

01

なぜふつうに食べられないのか
拒食と過食の文化人類学  

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おいしいなんて思ったことない―本に登場する調査協力者の一人、武藤さゆりさん(仮名)の何気ない一言が、研究を大きく動かし、1冊の本として結実しました。

 摂食障害の原因を探り、それを治すアプローチを模索する論文や本がほとんどの中、本書は摂食障害を「病気」と捉えることを差し控え、当事者の方が食べ物をどのように捉え、どう体験しているのかを描くことに焦点を当てました。このことが発売から8年が経過しても本書が版を重ねている理由だと考えます(7刷,2023年04月時点)。

 とはいえ、当初は複数の版元に原稿を断られ、出版に至るまではかなりの苦労がありました。その意味で本書は、他者評価の「当てにならなさ」を身をもって教えてくれた1冊であり、その体験は現在に生かされています。

  Kindle化のお誘いは常にあるのですが、紙質など細部にこだわって作ってもらったため、紙版のみのご提供です。

  春秋社より2015年刊行。2016年立命館大学生存学奨励賞、2017年多文化間精神医学会若手奨励賞 受賞。

02

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医療者が語る答えなき世界

​いのちの守り人の人類学

『なぜふつうに 食べられないのか』では、当事者の視点に焦点を当てたため、医療者の考えを平面的に捉えすぎた反省がありました。従って本作では、医師、看護師、理学療法士、言語聴覚士など、多様な医療職の視点をインタビューと観察を通じて描いています。

 循環器外来と漢方外来では断続的に4年間のフィールドワークを行なっており、その成果も存分に生かされました。

 患者からすると権力者である現場の医療者は、組織や制度の観点から見ると意外と脆弱であること。答えを知っていそうに見える医療者も意外と答えを持っていないこと。医療者も人であり、組織、制度、ガイドラインなどの縛りの中で時に窮屈さや葛藤を抱えながら、患者さんに向き合っていること。これらを知れたことは、その後の著作に大きな影響を与えることとなりました。

 筑摩新書より2017年刊行。

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03

急に具合が悪くなる

​宮野真生子との共著

 2018年9月、イベントを通じて初めてお会いした哲学者の宮野真生子さん。

 彼女との出会いは、それからちょうど1年後、10通の往復書簡として結実することとなります。

 しかし宮野さんは刊行2か月前の7月、自分の担当部分を全て書き終えたのち、患っていた乳がんとたまたま罹患した感染症によってこの世を去りました。

 本の執筆中に共著者の具合が劇的に悪くなり、刊行前に亡くなるという体験は、私の心にさまざまな痕跡を残すこととなります。

 ここに書かれた言葉に嘘をつかないこと。これが本書刊行後に誓ったことであり、そのことが私にとって彼女との約束を果たすことでもあります。

 晶文社より2019年刊行。10刷。2021年に韓国語版刊行。

04

ダイエット幻想
​やせること、愛されること

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『なぜふつうに食べられないのか』を軸にしつつ、その後のフィールドワークの成果も加えながら、体型に悩む若者に向けて執筆した本がこちらになります。本書では、前作で入れ込むことができなかった人間関係や「自分らしさ」をめぐる問題についても言及。体型をめぐる悩みは究極的には自分と他者をめぐる関係と繋がっていると考え、前半と最終章は特にそこに注力しました。

 また自分が歳を重ねる中で、若い頃に抱えていた体型についての悩みの手触りが消えかけている実感もあり、それが消える前に本書を形にしておきたいという思いもありました。

​ 本書は20代の方だけでなく、意外にも50代を過ぎた男性の方からも共感の声が届いています。

 2021年には、「海外の子どもにも紹介したい子どもの本」の1冊にも選出されました。2019年にちくまプリマー新書より刊行、3刷。

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05

他者と生きる
​リスク・病い・死をめぐる人類学

 摂食障害、循環器疾患、漢方医学、糖質制限、HPVワクチン、コロナ禍など、これまで扱ってきたテーマと深めてきた視座がここに結実しました。その意味で本書は私の集大成であり、これまでの著作に比して筆致が堅くなっています。

 「リスクの実感」がどのように身体化されるのかを扱った第1部が、第2部の「自分らしさ」をめぐる話につながり、これらの話が全て最終章の「生成される時間」に繋がります。

 現代医学や疫学が身体感覚のレベルにまで入り込み、私たちの暮らしを書き換えていくことを批判的に捉えながら、それを可能にする人間観を人類学をベースにしながら解き明かしています。

​ また最終章は、『急に具合が悪くなる』の最終便で共著者の宮野真生子さんが唐突に語り出す「時間の厚み」について、人類学者としての応答ともなっています。

​ 集英社新書より2022年に刊行。5刷。

問題利用:立命館大学、津田塾大学、甲南大学など

 

06

​解説、章執筆、対談、帯掲載など

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ワクチンの噂:どう広まり、なぜいつまでも消えないのか

​ハイジ・ラーソン 著

解説

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死にたい」「消えたい」

思ったことがあるあなたへ​​

担当箇所

​自分の身体は、誰のもの?

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The Fat Studies Reader

担当箇所

Bon bon fatty girl : a qualitative exploration of weight bias in Singapore

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Dissonant Disabilities: Women With Chronic Illness Explore Their Lives

担当箇所

The Emergence of Body Image Disturbance in Singapore

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はじめて学ぶ文化人類学:人物・古典・名著からの誘い

担当箇所

​アーサー・クラインマン

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過剰可視化社会​

​與那覇潤 著

対談

​健康な「不可視の信頼」を取り戻すために

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手づくりのアジール 「土着の知」が生まれるところ

​著者 青木真兵

対談

​生活と研究

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親愛なるレニー: レナード・バーンスタインと戦後日本の物語

著者​ 吉原真里

​帯掲載・書評

きっと吉原は書簡の美しさに取り憑かれ、澄み切った渦に巻き込まれるように本書を書いたに違いない。

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生きていること

​著者 ティム・インゴルド

帯執筆

あなたの生に出逢うため​世界と命に己を浸せ。そして「共に」運動せよ

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絶滅へようこそ

​著者 稲垣諭

帯執筆

​機械の僕のように家畜のように暮らしたっていいじゃないか。だってもう"人間"は終わっているのだから

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